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第649話

「いただきます。」 ぱくっと頬張ると、割れたそこから美味しそうな湯気がたつ。 「美味いか。」 「はいっ。 正宗さんもどうぞ。」 にっこりと笑いながらコンビニで買ったコロッケを差し出す三条に、長岡は身を屈め素直に従った。 「ん、美味いな。」 「はいっ。」 所々街灯が照らす真っ暗な道を2人で歩く。 随分と冬の色を濃くした空気は鼻や耳、指先と末端を痛ませる。 新雪を踏みながら白い息を吐いて隣を歩く遥登を盗み見た。 無意識ならこういう事も恥ずかしがらずに出来るのに意識してしまえば出来なくなる。 解っているから口には出さない。 「中華まんも食うか? ほら。」 「良いんですか?」 「あぁ。 半分こしようか。」 「やった。 じゃあコロッケも半分こしましょう。」 半分に割った中華まんを差し出す。 三条は湯気のたつそれに数度息を吹き掛け冷ますとはふっと頬張った。 「うまっ。」 「美味いな。」 なんでも美味そうに食べる三条は嬉しそうな顔で隣を歩く。 きっと今年ももうひとつの願い事は叶うだろう。

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