652 / 1273
第652話
ドサッと落ちた雪に参考書から顔を離す。
リビングの掃き出し窓から外を眺めると、キラキラと太陽を反射して眩しい。
ふと視線を感じそちらを見ると書き初めをしていた弟が手招いた。
「兄ちゃん兄ちゃん。
見て。」
「なに?」
上下を持ってピンと目の前に掲げられたのは力うどんの4文字。
「腹減った。」
「主張の仕方すごいな。」
独特の主張の仕方に思わず笑ってしまう。
炬燵から出て書き終わったものを見るとどれも大きく弟らしい文字で初日の出と書かれている。
自分も書いた記憶がある冬休みの宿題。
何故か1枚だけ三條優登と名前が書いてあるが、名前の練習だろうか。
「俺が餅焼くから昼ご飯に食べよ。
ね。」
「うどんは?」
「兄ちゃん作って!」
人懐っこい笑顔で言われてしまえば嫌とは言えない。
「はいはい。
じゃあ、手洗ってな。」
「やったー!」
優登は台所へ行くと早速手を洗う。
ボタボタと黒い泡がシンクを汚し、代わりに柔らかい手のひらは元の白さを取り戻していた。
小鍋に水を張り火にかけると、弟を背中に冷蔵庫を覗き込む。
お節も勿論美味しかったが、やっぱり食べ慣れた普通の食事の方が好きだ。
母さんの作ってくれるからあげ
父さんがたまに作ってくれるキャベツいっぱいの焼きそば
弟が作ってくれるお菓子
それから、長岡と食べるカレーやオムライス
たまにしか食べられないご馳走も確かに美味しいが、やっぱりそう思う。
2人で出来上がったうどんを食べていると何時もより早く帰ってきた母にまたうどんを作り、午後からも参考書に向かった。
ともだちにシェアしよう!