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第664話
「このにおい…」
風呂上がり何時もの様に髪を乾かされていると、後ろからふわりと嗅ぎ覚えのあるかおりがした。
振り返ると長岡は手を擦り合わせ、腕を取られる。
ぬるりと広がるそれに長岡の顔を見上げた。
「修学旅行の土産。
遥登、風呂上がりカサ付くの気にしてただろ。
丁度良いかと買ったんだが、気に入らねぇにおいか?」
「違いますっ。
良いにおいです。
でも、このにおいどこかで…」
爽やかなにおいに少しだけ甘さが混じったそれに、記憶の糸を探る。
どこだっけ
正宗さんと一緒の時だと思うんだけどな…
…あ
耳も首も、掴まれてる腕さえも真っ赤にした三条に長岡も合点がいったのか、ニヤリといやらしく笑った。
「あぁ、修学旅行のホテルで潤滑剤替わりに使ったやつ。」
風呂上がりの身体が更に熱を持つ。
振り返るとにやにやとした長岡と目が合った。
「良い反応すんな。
かわい。」
「なんっ、で」
「思い出す?」
あきらかに楽しんでる声だ。
狡い…
「きもちかったな。
バレるかもって思っても腰とまんねぇし。」
「…ぁ、えっと」
「背徳的なのって燃えるよな。
しかも遥登感じやすくなるし。
風呂入ったばっかりだけど、したくなる。」
更にそれを追加して手に塗り拡げると下着の中へと入ってきた。
無毛のそこをゆっくりぬめりを拡げる様に動く。
「本当につるつる。
あ、少し生えてきてるな。」
「うそ、だって昨日…っ」
「嘘。
昨日綺麗にしてきてくれたんだ?
今日泊まりだから?
期待してくれたのか。
嬉し。」
はっと言葉を飲み込むも、もう遅かった。
背中を丸め身体を這う長岡の手に耐える。
脚の付け根から臍、胸と上がってきた。
比例して息も上がる。
「まってくださっ…俺…もう、出ませんから…」
「精根尽きた?」
「ん…」
「遥登って手錠だのロープだの好きだよな。
首輪したら目ぇとろんってさせて。
すげぇ感じてたの可愛かった。」
「違います…」
うなじに顔を埋められ身体が跳ねた。
呼吸する度に息が当たってゾワゾワする。
「またしような。」
「……、あ」
スイッチの切れた恋人はスイッチが入った時が嘘の様に甘やかしてくれる。
こんなの誰だってイチコロだ。
クスクス降ってくる楽しそうな声に抗議しようも言葉が見付からず、悔しくて後ろを振り向く。
余裕綽々な長岡に、もう一杯いっぱいの自分。
鎖骨にもぬめりを拡げるように動く手にこくんと唾液を飲み込む。
何時もされてばっかりじゃ悔しい…
俺だって
ぐいっと首に手を伸ばし引き寄せると口端に口を付けた。
「っ、」
「なにそれ、かわい。」
一瞬大きく目を見開いた長岡は三条の精一杯の背伸びに破願した。
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