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第667話

抹茶、チーズ、栗、ラムレーズンどれにしようか三条は迷っていた。 どれも美味しそうで、実際美味しい。 本当にどれにしようか迷ってしまう。 あたたかいお茶の入ったマグを持った長岡は三条が真剣に選んでいる箱の中を覗きながら隣に腰を下ろした。 授業ぶりの真剣な横顔を眺めながらお茶を一口飲む。 「うーん……やっぱりチーズにします。」 「じゃ、俺はこれ貰うな。」 やっと選べた三条がチーズを手に取ると長岡はその隣のものを手に取る。 昼飯もしっかり食べたが甘い物が好きな三条はにこにことご機嫌な顔をみせていた。 長岡も甘い物は好きだし、恋人の嬉しそうな顔が見れて心なしか頬が緩んでいる様に見える。 長岡がフィルムを剥がし一口かじり付くと、隣で三条もしあわせそうな顔をしてどら焼きにかじり付く。 三条は美味しいですねと満面の笑みを惜し気もなく長岡に見せた。 「遥登、一口食うか。」 「良いんですか? いただきます。」 ラムレーズンがしっとりした生地に風味を効かせ洋風な味わい。 コーヒーにも合うが不思議とお茶にも合う。 「チーズもどうぞ。」 「ありがと。」 にこにこと美味そうに2人の腹の中へと収められていく。 三条は最後の一口を口に放ると律儀にご馳走さまでしたと手を合わせた。 「もう明日から学校はじまるな。 課題終わったか。」 「はい。 数学の量が毎回半端なくて今回もなんとか終わらせました。」 「数式覚えんなら手数こなすのが早ぇからな。 しっかし、遥登が半端ないって言うんだからすげぇ量なんだろうな。」 「がんばり、ました…」 おずおずと手を広げると目の前の彼はふはっと笑った。 「うん。 大変よく頑張りました。 花丸です。」 力一杯抱き締められ苦しい程の力に笑顔が溢れる。 髪を撫で回す恋人の癖。 自分を子供の様に甘やかす恋人。 また明日から毎日会える。 教師と生徒。 それでも多くの時間を共有出来るのが嬉しい。 肩に顔を埋め甘える三条に長岡はまた明日からの活力を貰う。

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