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第675話
連日の寒波が和らいだ三連休、それでも冬の寒さは厳しく長岡からのあたたかな夕餉の提案に三条は嬉しそうな顔で頷いた。
グツグツと美味しそうに煮えた鍋を猫舌の三条もはふはふと頬張る。
「美味そうな顔してんな。
本当に作りがいがあるよ。」
「本当に美味しいです。」
「白菜ばっか食ってねぇで肉も食え。
ほら、肉。
肉団子も食え。」
過保護な恋人は自分の皿に肉を盛る。
なんの為のミルフィーユ鍋なのかとも思うが、加熱された白菜は甘くとろけつい箸が伸びてしまう。
風邪予防だと長岡が作ってくれた沢山の葱と生姜の入った肉団子も美味しい。
しっかりと冷ましてから口に運んだつもりだったが、フェイントをかけられてしまい口の中に熱々の肉汁がじゅわっと広がり三条は目をまるく開いて驚いた。
「…っ」
「大丈夫か。
しっかり冷ましてから食え。」
こくこく頷きながらも痛む口の中に三条は眉間に皺を寄せた。
皮が捲れてしまったようで上顎がべろべろする。
「火傷したか?」
「平気です。」
心配させまいと笑ってみせると気を付けろと頭をぽんぽんと撫でられた。
きっと口の中の事だってお見通しなんだろうな。
次は気を付けようと執拗に冷まし今度は大丈夫だと食べていると、長岡がじっとこちらを見ている事に気が付いた。
「どうかしましたか?」
「シメはうどんにするか米にするか迷ってる。
遥登はどっちが食いたい?」
「うーん、どっちも美味しそうです。」
「たまご入れよっかな」
にやりと視線を流す長岡に三条は眉を八の字に下げる。
余計に二者選択が難しくなってしまった。
長岡の作るかき玉はどちらもふわふわで気持ちまでふわふわしてしまう程美味しい。
どっちにしようか。
悩めるって贅沢だ。
「尚更決められません。」
「遥登が食いたい方、俺も食いたい。」
「えっと、うどん…米…」
うんうんと悩む三条を横目に長岡は肉団子を口に放ると、授業の時より悩む姿を楽しそうに眺めていた。
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