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第678話

コーラを飲みながら隣に視線をやるとじっとテレビ画面を見ていた。 真剣に見いる姿は授業の際とは違いまた新鮮で見ていて飽きない。 三条がナニかを吸収する瞬間を目にして、この子の見てる世界を自分も見てみたいとより強く思う。 どんな色で、においで、湿度で、温度で感じているのか。 どう咀嚼して、吸収するのか。 もっと、もっともっと知りたい。 どれ位そうして眺めていたか、三条がほうっと息を吐くと辺りの空気が変わった。 聞こえてくる音楽から映画は終わったのだろう。 結局隣の恋人ばかり眺めていたがこれはこれで楽しい。 視線に気が付いた三条がゆっくりとこちらを振り向き、照れた様に笑った。 ふわりと辺りに花が咲き乱れる。 「見入っちゃいました。」 「面白かったって事だろ。 良かったよ。」 さっきとは売って変わって穏やかな空気は何時もの遥登のもの。 肩が触れる程の距離にいる自分以外の存在の心地好さ。 むしろパーソナルスペース内にいて欲しいとさえ思ってしまう。 あたたかい身体に触れその体温が自分の手をあたためていくのを感じながら、感想は?と聴くと学校じゃないんだからと苦笑されてまった。 「遥登の真剣な横顔見るの新鮮だったな。」 「なに言ってるんですか…。 映画観てなかったんですか。」 「チラチラ観てた。 俺が見てたの気が付かなかったのかよ。 遥登、ほら、すぐ触れる。 この距離も新鮮だな。」 耳を擽り、後頭部に手を回す。 鼻が触れた瞬間、咄嗟に顎を引かれ遥登はこれからナニをされるか理解しているのだと笑みが溢れた。 「キスすんだろ。」 「んぅ…っ、ん」

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