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第679話
大きくて冷たい手が、耳を擽りながら後頭部へと回る。
その瞬間キスされるんだと思わず顎を引いてしまうと、鼻が触れたまま目の前の唇が意地悪に弓を描いた。
「キスすんだろ。」
「んぅ…っ、ん」
噛み付く様なキスに心臓が五月蝿い程騒ぎだす。
この肉食動物みたいなキス、好き
この目も…
好き
すごい好き
「ん、…ッ!?」
もう片方の手がジンズの中に侵入してきて肩が跳ねた。
やわやわと尻臀を揉む手、その中指だけ動きが違う。
下着の上から臀裂をなぞる動きはまるで愛撫を意識させるもの。
息も出来ず、後頭部を押さえる腕を掴むとやっと離してくれた。
新鮮な空気を肺いっぱいに吸い込む。
「また息止めて苦しいだろ。
なんでキスだけは上手くなんねぇかな。」
「はぁ、はぁ…はぁ…」
両手をフローリングに縫い止められ三条の目の水分量が多くなった。
その目に、長岡も煽られる。
「ま、初々しくて好きだけど。」
上唇を食まれ、ふわふわとしてきた。
きもち…
どうしよう
きっと今変な顔してる…
「やらしー顔になってきた。
どうした。
発情した?」
「しら、ない…です」
「へぇ。
知らないのか。」
チュゥ、チュ
「本当に知らねぇの?」
「…しらな、い」
言い当てられ羞恥が込み上げる。
恥ずかしい。
いやらしい事を期待してるみたいだと、懸命に邪な考えを振り払おうとするが長岡はエスカレートしていく一方。
鎖骨に吸い付きはじめた長岡に小さく声を漏らしながらこれ以上キスに酔わないよう素数を思い出す。
2、3、5、7、11、13、17、19
えっと…それから…23、29
きもち…ぃ
「息上がってきてるくせに強情だな。
余計煽るだけだってわかんねぇのか。」
さんじゅ…いち、
円を書いていた指がアナルに当てられた。
無意識にヒクンと吸い付くそこに体温が上がる。
も…考えられない…
ギラギラした雄の目に見下ろされ、被虐心が沸き起こる。
「遥登、最後の質問だ。
本当に知らねぇのか?」
「………あ、の……はつじょー、しました」
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