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第683話

あれ、今年は少ない 去年は女の子達で賑わい熱気に包まれていた催事場は大雪のせいか人が少ない。 特色化選抜で休校の平日というのもあってか人気も疎ら。 嬉しいけど、これはこれで目立つな 可愛らしいチョコレートを前に尻込みしてしまいそうになるが、あの笑顔を思い出して足を踏み入れた。 あっちを見てもこっちを見てもチョコレート。 甘いにおいに酔ってしまいそうだ。 どれにしようか迷ってしまう。 去年と同じ物をと思ったが、こうも沢山の種類があると目移りしてしまいそうになる。 自分は酸味のあるビターなものが好きだが、ナッツのかおりのするものや花香のあるものも美味しい。 ボンボンも定番のウイスキーやワインの他に日本酒や焼酎のものもあるし、長岡の贔屓の球団のシールが貼られたチョコもある。 うーん 一応去年と同じのって思ったけど、いざ目の前にすると迷うな 「あれ? 三条くん?」 「知佳ちゃん、未知子ちゃん。 あれ…家、反対じゃなかった?」 「遊びに来たの。 三条くんもチョコ買うの?」 まずい… 「うん。 ここのお店のチョコ好きで…」 「そうなんだ。 ここ美味しいよね。 あ、このお店のプリンも美味しいよ。 おすすめ。 三条くん本当に食べるの好きなんだね。 知佳、私達も買う?」 「うん。 三条くんご一緒しても良いかな。」 「勿論。」 流石は女の子。 このお店のチョコはどうだとかあのお店はこうだとか詳しく教えてくれる。 自分チョコが流行っているお陰で違和感がないのかさらりと受け入れられた。 それに女の子と一緒だとあまり目立たない気がする。 「私は定番だけど、このお店のが好きかな。 学生には少し高いけどね。 でも美味しいの。」 「去年これ買ったけど美味しかったよ。 甘いのが好きならおすすめ。 このラズベリーのやつね。」 「へぇ。 美味しそうだね。」 可愛らしくラッピングされた甘いにおいが似合う2人はにこにこと楽しそうだ。 きゃっきゃっと楽しそうに話す隣でショーケースの中を覗く。 可愛らしいチョコレートに笑顔がダブった。 『遥登』 本当に骨抜きにされてしまった。 メロメロだ。 「んー、やっぱりこれかな。 お父さんとお兄ちゃんの分は板チョコ溶かせば良っか。」 「自分チョコにお金かけちゃうよね。 私もこれにしよ。 お父さんはこれでお母さんの分も買っちゃおう。」 可愛い顔をしてえげつない発言をさらりと吐く2人の隣で三条もやっと本命を決める。 去年と変わらない物と自分用の2つ。 チョコレートみたいに甘くどろどろと身体を包むナニかに三条ははっと気を引き締める。 友人の前で何を考えているのか。 レジに向かう2人の後ろを歩きながらそんな思いを振り払った。

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