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第687話
教師をしてると色んな事がある。
種々な言葉を投げ掛けられる。
良いも悪いも生徒は素直だ。
「座ってください。」
「は、うるせぇよ。
指図すんな。
死ね。」
溜め息が出そうになる。
他に語彙はないのか。
余程イライラしているのか男子生徒は食い掛かってくる。
自分より、恋人よりも小さな生徒に下から睨まれようが凄まれようが別にこわくはない。
単にイライラしているのはその様子から見てとれる。
「先生が気に入らないならそれで構いません。
とにかく、座ってください。」
「あ"ー、うっせぇなぁ。
顔だけの癖に喋んなよ。」
今度は笑いが出そうになる。
下げずんでいるのか誉めているのか解らない暴言が飛んできた。
他の生徒達は皆、嫌そうにめんどくさそうに下を向いたまま動かない。
巻き込まれたくない、そんな雰囲気にすらこの生徒は気付けていない。
なにをイライラしているのだろうか。
そりゃ、めんどうだよな
俺もめんどくせぇよ…
「授業受けたくないならそれで構いません。
寝てようが何してようが文句も言いません。
とにかく座ってください。」
…チッ
舌打ちをし、どすんと座った生徒に少しだけ教室内の空気が緩んだ。
別に死ねと罵られようが授業を放棄されようが痛くも痒くもない。
興味のない人間の言葉など馬耳東風だ。
「授業はじめます。
課題の解答からしましょうか。」
生徒だって人間だ。
苛立つ時だってあって当たり前。
だが、それを他人にぶつける様じゃただの子供の癇癪と同じ。
上手く咀嚼出来ないならせめて上手く隠せ。
人にご機嫌取りを強請るな。
「ここの解答をこの列お願いします。」
それに、言い方は悪いが授業時間が過ぎれば関係なくなる。
本当に大変なのはこのクラスメイト達と担任の方だ。
クラスメイト達は次の授業も一緒にいなくてはいけない。
どこか気を使い、刺激しないよう過ごすんだろう。
息苦しい。
カツカツと黒板とチョークがぶつかる音がやけに大きく響く教室内の空気は重いまま、長岡の授業は終わった。
「起立、礼。
ありがとうございました。」
「ありがとうございました。」
まだ午後からの授業が残っている教室内は淀んだ空気に満ちている。
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