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第701話
「こんにちは。」
「ん、こんにちは。」
優しく微笑んだ長岡は半身をひいて三条を招き入れた。
少しずつ春の色を濃くする季節は服装選びにも困る。
長岡は相変わらずシンプルな服を着ているが、今日もとてもよく似合っていた。
「きちんと話せたか?」
「はい。
久しぶりに父と沢山話しました。」
「そうか。」
ぽんと頭に手を置かれると、そこから色んな言葉が染みてくる。
良かったな
頑張れ
大丈夫だ
噛み締めるのさえ勿体ないあたたかい言葉。
だけど、しっかりと噛み締め受け取る。
そして、自分の力になれ。
「風冷たかったろ。
何飲む?」
「あ、俺が淹れます。
正宗さんと同じのが良いです。」
「じゃあ、遥登が何時も飲んでる甘いコーヒーお願いしようかな。」
ケルトに水を注いでいると後ろからきゅぅっと抱き締められ笑顔が溢れる。
まだ照れはあるけど、純粋に嬉しい。
この大切な人が味方になってくれるなら無敵に思えるから自分は得な性分だ。
「でも、まさか驚いたよ。」
「あ…、ずっと迷ってて…」
手に持ったままのケルトを取り上げられシンクに置くと長岡は三条を調理スペースに上げる。
行儀が悪いとなんだか尻がもぞもぞするが長岡はよくこうして三条を此処に座らせていた。
自分の目をしっかりと見る長岡のまっすぐな目に射ぬかれる。
心の中まで見透してしまうんじゃないかと思う程、とても綺麗な目がまっすぐ目の前にある。
「沢山悩めば良いじゃねぇか。
それだけ真剣に向き合ってるって事だろ。」
「それ屁理屈じゃ…」
「良いんだよ。
それに、マジで嬉しいし。」
砕けたのは口調だけでなく表情もだった。
本当に嬉しいとわかるその表情に愛しさが込み上げる。
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