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第702話
三条は長岡の服を握るとちゅっと口に自分のそれを触れさせた。
何時もの様に口端ではなく、きちんと唇に。
「どうした。」
「えっと…、」
したは良いがその先の事など考えてなかった。
じわじわと熱くなる頬に込み上げる羞恥。
尻がもぞもぞとするのは調理スペースに座っているからだけではない。
「なんかの仕返し?」
長岡は顔を近付け頬に唇が触れるか触れないかの近さで囁く。
視界の端に上がった口角が見えた。
「ち、がいます…したくなって、ですね…」
「嬉しい事言ってくれんだな。
俺もしたい。」
ちゅっ、ちゅっ、と顔の至るところにキスが降ってくる。
頬に耳に、目蓋に触れる唇がふわふわとあたたかく気持ち良い。
なんで好きな人とのキスはこんなにも気持ち良くてしあわせになれるのだろうか。
こんなにも胸がいっぱいになる。
「口開けて」
「…ぁ、ん」
次第に深くなるキスに手をさ迷わせていると、首に回すよう誘導された。
細く見えてしっかりとした首は血管が浮いていてそれが好き。
自分のとは違い胸鎖乳突筋も男らしくて格好良い。
好き
好き
溢れる気持ちは言葉にならずとも触れあってる箇所から伝わっていくのか長岡は口を離すとにこにこと嬉しそうな顔を見せてくれる。
学校での作り笑いじゃなく、本当の心からの笑顔。
「此処と、ベッド、どっちが良い?」
「……先に、シャワー…」
「ん、そうか。
先にシャワーな。」
首に顔を埋めながらそう答えるとクスクスと嬉しそうな声が降ってきた。
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