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第716話

数日ぶりの友人の顔に会話は尽きない。 「早く帰りたかったら静かにしような。」 離任式に学校へと出向けば、クラス替えだのロッカーの移動だので午前中は丸潰れ。 離任式が終わったばかりの騒がしい体育館で学年集会が行われていた。 学年主任の声にざわつきが収まる。 そりゃ早く帰れるにこした事はない。 三条達も終わったら何時ものモフで昼飯を食べる予定をたてている。 今年もクリームチーズの季節がやってきたと三条はわくわくしていた。 それからレモネードも美味しそうだ。 「3学年は持ち上がりでクラス替えはなし。 で、お待ちかねの担任の先生方の発表です。」 再度騒ぎだす学年に静かにと言い放つと学年主任は上着に羽織っているジャージから紙切れを取り出す。 ミスプリントの様で裏には何か文字が書いてあるが三条の場所からじゃ読み取れない。 正宗さんは異動じゃないし、このまま担任も持ち上がりだと良いな 立っている担任を一瞥すると色の抜けた髪が太陽の光を反射してキラキラしている。 何時見ても綺麗なその姿はずっと見ていても飽きない。 ほうっとしてしまいそうになるがここは学校だと気を引き締めた。 「えーっと、毎回A組からじゃあれだからたまにはE組からにするかな。 まず、E組担任は小出先生。 副任は…」 見掛けない先生もいるけど、担任だった先生はみんないるし3年でいきなりシャッフルはないだろうな 最悪、授業は受け持ちが良いな 先生の授業解りやすいし丁寧だし…、 我が儘と分かっていながらも願わずにはいられない。 あの下手な参考書より解りやすいプリントに丁寧な説明、質問にいけば根気よく教えてくれる姿。 生徒に合わせてヒントの出し方も変えてくれているのも知っている。 B組の担任副担任が発表され、疎らな拍手が収まる。 いよいよA組だ。 「最後、A組担任は長岡先生。 副任は」 嬉しそうなA組女子達の声にも反応せず、長岡は何時もの顔のまま頭を下げた。 や、ったぁ 緩みそうな頬に力を入れてなんてことない顔をつくるが、うまく出来ているだろうか。 気を抜けばすぐに緩んでしまいそうだ。 「受験生としての自覚をしっかり持って…」 学年主任の声など聞こえない程に嬉しい。 田上吉田とも同じクラスのまま、まさか担任まで変わらないなんて。 回ってきたプリントを後ろに回すと、後方で田上が手を振ってきた。 更に後ろで吉田もそれに習う。 どうしよう すげぇ嬉しい

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