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第731話

2週間ぶりに校舎に明るい声が満ちた。 生徒がいない方が仕事は楽だが、断然こっちの方が校舎に似合っている。 「おはようございます。 それから、3学年進級おめでとう。 また1年よろしくお願いします。」 新しくなった出席簿を持ち教壇の前に立ち、見慣れ顔触れに挨拶をする。 囃し立てる声が大きいのは1年A組が多いから。 早いもので長い生徒とはもう2年も一緒にいる。 そして3年目の年がはじまった。 「今日はこれから始業式、その後配布物配ったり回収したりします。 まだ記入してない人はそれまでに書いておいてな。 それから…」 諸連絡を伝えながら教室の真ん中であの視線を感じる。 あの生徒から。 やっぱり生徒がいる方が良い。 不純な理由も混ざっているが、頑張る気力が沸く。 きっと今日も定時には帰れないだろうが構わない。 あの生徒と一瞬目が合った。 あぁ、頑張れそうだ。

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