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第737話
「186.5、と。
伸びたな。」
「ありがとうございます。
先生程じゃないですよ。」
紙切れを手渡すと苦笑されてしまった。
目の前の成長期の生徒は細さも目立ってやけに大きく見えるが、自分より小さい。
ジャージも短くなったのか手首が見えている。
あと1年で買い替えは勿体ないが、自分は買った覚えがあった。
ズボンは腰履きでなんとかなっても上着は寒い。
「俺らが小さいのか?」
「三条と長岡がでけぇんだよな?」
「吉田、せめて本人の目の前なんだから先生付けてくれよ。」
「あ、長岡先生。」
次に吉田の頭にスケールを合わせると174だった。
あまり伸びてない印象だが比較する相手が三条だからだろうか。
174は決して小さい方ではないと思うのだが小柄だ。
「伸びてない…。
俺の成長期はどこにいった…」
やっぱり伸びてなかったらしい。
飛び出た頭を目印に中川達が集まる。
「三条くん、伸長いくつ?」
「186。」
「おっきいね。
私と20㎝以上違うよ。」
どうせなら体重も増えてくれたら良いのだが、身に付かない体質はそう簡単には増えてはくれない。
先程手渡した紙には、10㎝以上小さな吉田より軽い数字が書かれていた。
A組の生徒と話すその後ろ姿をぼんやり眺め次の生徒の計測をする。
固まって喋っているA組は、今度は自分の話をしはじめた。
早く体重測定も終わらせれば良いのに。
だけど、近くで生徒の笑顔が見られるのは嬉しい。
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