「トイレ行ってくる。」 「んじゃ、先に行ってるな。」 身体測定も終わり早めの解散に三条は４棟トイレへと向かった。 渡り廊下とは名ばかりの屋根があるだけの外を歩いていると、どこかから風にのって芳香が運ばれてくる。 桜に梅に木蓮、水仙と豊かな緑に囲まれた敷地内は風さえも鮮やかで気持ちが良い。 校舎脇にはたんぽぽも咲いている。 「こんにちは。」 不意に掛けられた耳馴染みの良い声にその花はより彩度を増した。 「長岡先生、こんにちは。」 大好きな人の存在だけで世界はこんなにも綺麗になるから不思議でたまらない。 教師の仮面をしっかり貼り付けた担任はトイレ？とわかりきった事を聴いてきた。