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第739話
個室に押し込めるとポケットからスマホを取り出し、静かに会話をはじめる。
『頻尿?
よくトイレで会いますね』
『違います』
『会えて嬉しい』
『おれも』
便座を閉めたそこに座り、細い腕を引く。
こうして膝の上に乗せていると確かに視線が上がっている。
毎日見ているから気が付かなかった。
前髪を後ろに撫で付けながらサラサラとした髪を弄っていると、恥ずかしそうな顔から満更でもなさそうな顔に変わっていく。
実家の愛猫も撫でるとこんな顔をしていた。
顎にちゅぅっと吸い付くとくりくりした目がぱちくりと自分を捉える。
頭に手をやり自分の方に押し付ければ、首に顔を埋める可愛い恋人。
なんだか今日は素直で可愛い。
ジャージは寒くないか。
飯は大丈夫か。
聴きたいことは沢山あるが、今はこのぬくもりを存分に一人占めしたい。
髪に鼻先を埋めると清潔な遥登のにおいがする。
愛しいにおい。
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