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第741話
入学式から早くも2週間が経った。
いまだ緊張感の漂う1年生教室での授業はなんたからこちらの背筋まで伸びる。
この緊張感も何時まで持つのかは知らないが。
「質問ありますか。
今聞きにくかったら後で聞きに来ても構いませんからね。」
失礼な話だが、緊張に変な筋肉に力が入っているのか面白い顔をしている。
もっと力を抜けば良いのにと思いながらもその緊張は身に覚えがあった。
真新しい制服、指定のスニーカー、さわさわと風に揺れる落葉樹の奥で桜が最後の力を振り絞って咲いている。
春は悲しいばかりではない。
廊下と中庭を挟んだ向かい側は3年生教室。
A組は数学だったか。
窓の外にやった視線をすぐに手元の教科書に戻し授業を進めていく。
「授業ペース早いですか?」
無言。
まぁ慣れてない環境で声を上げるのは抵抗があるのは解る。
無言は肯定ととっても良いだろうと黒板に向き合うと声がかかった。
「大丈夫です。」
「ありがとうございます。
じゃあ、進めますね。」
ぽつりと聞こえた誰かの声も、あと1ヶ月もするば楽しそうな声に変わる。
それまで猫被りが続くのかと思うとこれはこれで見ていて楽しい。
自分も猫を被っている事を棚に上げ、長岡は面白いなと思いながら授業を進めていった。
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