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第760話

三条は線が細い。 腰も薄いし肋も浮き出ている。 本人曰く胃下垂で食べてもつかないらしいがそれはそれで心配になる。 胃下垂にしも痩せすぎだと思うが、体質だろう。 がつがつ責めていると折れるんじゃないかと思う事すらある。 「うまいか?」 膝の間に座らせ餌付けする。 こくこく頷く三条の口にケーキを運ぶとパクッと食らい付いてまるで雛のようだ。 さっきまでもぞもぞと落ち着き無さそうにしていたが意識が目の前のケーキにいったのかそれとも馴れたのか大人しい。 フォークで一口掬って差し出すとまた食い付いた。 遥登はこのロールケーキがいたく気に入った様で既に1/4を食べ切っていた。 細い割によく食べる。 それは安心だ。 「すっごい美味しいです。」 「良かった。 沢山食え。」 嬉しそうに頬張る遥登に乱雑とした即売会場へ出向いたかいがあったと長岡も頬を緩ます。 「正宗さん、ありがとうございます。」 ちゅっ口の端に落とされた小さな口づけ。 愛おしさが込み上げる。 「キスってのはこうやんだよ。」 「んぅ、んんっ」 甘いのはケーキか遥登自身か長岡はその唇を堪能した。

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