778 / 1273

第778話

小雨が降る肌寒い日曜日、遥登とゆっくりしていると着信が入った。 ディスプレイには母の名前。 「悪い。 少し良いか?」 「はい。」 携帯を見せるとこくんと頷いたのでサンダルを突っ掛けてベランダへと出る。 画面をタップすると久しぶりの母親の声が聞こえてきた。 『もしもし、正宗? 母さん。 今、大丈夫?』 「少しなら。」 『お花届いたけど、どうしたの。』 「あー、母の日…」 『やだ。 本当にどうしたの。』 「たまには良いだろ。 蓬達の面倒もみてもらってるし、本も送ってばっかだし。 母さん花嫌いじゃないだろ。」 含みのある笑いに頭をがしがしと掻き回す。 これだから母親は。 『好い人でも出来たのかしら。』 「セクハラ。 ……感謝してるって事だから。」 『はいはい。 ありがとね、正宗。』 落ち着こうと室内に視線をやれば文庫本に視線を落とした遥登がいる。 触発された。 遥登は友達も家族もとても大切にしている。 誕生日に、自分なんかと会えて良かったと抱き締めてくれた。 親御さんが愛情を沢山注いだのだろう。 だから、愛される喜びを知っている。 誰かを愛し大切にする。 それを素直に格好良いと思った。 花屋で母親の好きな綺麗な色をした花を送った。 綺麗にラッピングされた花を見て母親はどんな顔をするのか、少し照れ臭いが少し気になる。

ともだちにシェアしよう!