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第783話

4棟トイレへと向かう途中、担任と擦れ違った。 一足遅かったかと肩を落としながら歩いているとポンと落ちた肩を叩かれる。 誰だと後ろを見れば長身の担任が自分を見下ろしていた。 「どうした。 悩み事か? 先生で良かったら相談にのりますよ。」 「え、」 肩をぐいぐいと押され廊下を歩く。 「勉強? 進路?」 「えっと…」 「もしかして恋愛とか?」 4棟トイレに着くとニヤリと口角を上げた担任にからかわれてるのだとわかったが、担任に構ってもらえるのが嬉しくて開き掛けた口を閉じた。 「色恋は専門外だけど、話位なら聴きますよ。」 扉を閉めた担任のスーツの裾を掴む。 知ってるくせに 「……恋人が好き過ぎて困ってます。」 一瞬目を見張った担任に、三条はわくわくする。 何時もドキドキさせられっぱなしで、たまに恋人をドキドキさせたいと言葉にしてみたらこんな姿が見れるとは。 長岡は口元を隠すと困った様に眉を下げ、すぐ何時もの顔に戻す。 「素敵な悩みですね。 今の言葉、恋人にも言ってみたらどうですか。 あと、自分から誘うとか。」 最後の言葉は声を潜め、自分にしか聴こえない様に低く甘くて囁いた。 全部の神経が囁かれた耳に集まる。 「精進、します…」 「役に立てれば幸いです。」 悔しいけれど、目の前で笑う担任の方が何枚も上手だった。

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