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第792話

ふとんの中にいると眠ってしまう。 何時の間にか寝落ちていた。 解っている筈なのに逃げ場のない空間、ふとんの中に引きこもってしまうのをやめられない。 ふと目を覚ますと目の前に首輪があった。 腕に挟まれているようで、恋人のにおいに包まれている。 「正宗さん、おはようございます。」 「ん? おはよう、遥登。」 自分を抱き枕の様にしていた恋人は挟んでいた腕を上げ、自由にしてくれた。 よく見ると上げた手には文庫本を持っている。 読書の最中だったのか。 本をチェストに置くと、恋人の癖がはじまった。 髪を撫で、耳を擽りキスを降らす。 「腹減ったろ。 少し早いけど、もう飯食うか? …どうした?」 「……もう、ちょっと」 「ちょっとで良いのか? 俺は、もっとが良いけど。」 言葉選びの上手い長岡に甘え胸に顔を埋める。 落ち着く心音、におい、体温。 一通り甘えると、チャリっと金属音をたてる首輪に触れた。 首輪したままなんだ 外した方が良いかな 「似合ってるか?」 「はい。 お洒落に見えます。」 「ははっ、お洒落…。 そうか。 お洒落か。」 寝起きの遥登に合わせ長岡も落ち着いたトーンでぽつりぽつり言葉を交わす。 「遥登に褒められると嬉しいよ。 でも、これは遥登のだからな。」 背中を優しく叩いていた手が腰へと伸び、強く抱かれた。 「遥登の方が似合ってる。」 妖しく目を細める長岡にドキッと心臓が跳ねる。 近付いてきた顔にぎゅっと目を瞑ると、顎に指をかけられドキドキと心臓が騒ぎだす。 クスクスと笑い声が聴こえ、ゆっくり目蓋を上げると隙ありとばかりに口を塞がれた。 「顔真っ赤。 遥登は飽きねぇなぁ。」 楽しそうに頭を撫でる長岡を見れて、満更でもない。

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