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第806話
安いミックス粉のチープな味のするホットケーキにバターとメープルシロップをたっぷりかけるとフォークを突き刺す。
シロップの染みたそれを口に入れると、じゅわっとしあわせな味が口一杯に広がった。
兄弟共に思わず頬が緩む。
「んまっ」
「んま!」
「良かった。
沢山食べてね。」
母親は食べ盛りの息子2人の為に大量のタネを作りにこにこと焼いてくれる。
リビング一杯に甘いにおいが広がり、目の前のホットプレートの上には美味しそうな焼き目のついたホットケーキ。
三条は、母親が焼いてばかりで自分の分のホットケーキが冷めてしまっているのに気が付いた。
「俺達焼くから母さんも食べて。
冷めてるの俺が食べるから頂戴。」
「そうだよ。
俺も焼けるの知ってるでしょ。
焼き立て美味しいから食べなよ。」
「ありがとう。
じゃあ、いただきます。」
フライ返しを受け取ると、焼き立てのものと交換する。
焼き立て熱々が上手く食べられない三条には冷めてた方が都合も良い。
しょっぱいのもが食べたくなったら、ホットケーキの上にハムとチーズを乗せマヨネーズを絞ればまたいくらでも腹に入る。
レタスを付ければ兄弟で1玉食べきりそうな勢いで腹に納められていった。
それは気持ち良い程に減っていく。
「母さん皿貸して。
はい、沢山食べてね。」
母親は何かを諦めた様に笑うと、兄弟が焼いてくれたホットケーキに受け取った。
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