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第809話

カリカリと紙の上をシャー芯が擦る音ばかりが聞こえる部屋は涼しくて勉強が捗る。 終わったー んー…、何時だ 長時間同じ姿勢でいたからか尻が痛い。 腕に付けた時計で時間を確認し、壁を隔てた向かいに座る友人に進歩はどうだとメッセージを送ると、今ならキリが良いとすぐに返信が来た。 電車の時間もあるしキリが良いなら解散だと、荷物を鞄に詰め1階に降りる。 本のにおいに頭を掠める大切な人。 集中力が切れた途端、これだ。 小さく苦笑いを浮かべ涼しい図書館を後にする。 自動ドアが開くと、気持ちの悪い空気が身体を撫でた。 「うわ、あつ…。」 「やべぇ…」 気温ばかりはどうしようもない。 じわりと汗をかきながら駅へと向かう。 信号待ちの最中もまだ沈みきらない太陽が最後だとばかりに熱を振り撒いている。 じわりじわりと体温が上がり汗をかき、入梅にはいったとは思えない。 「汗かいてきた。 ジャケットもういらねぇ。」 「涼しかったなぁ…。 教室もクーラー付けてくんねぇかな。」 吉田の言葉に3人は校舎を仰ぐ。 玄関の真上、準備室にはまだ燦々と灯りが点いていた。 長岡はいるのだろうか。 定時はとっくに過ぎている。 「A組の電気消えてるな。 もう誰もいねぇのか。」 「みたいだな。」 昼間とはガラリと印象を変える校舎を通り過ぎる際もう一度準備室を見上げた。 姿は見えないけれど、きっとあの明かりの下で仕事をしている。 だから、自分も負けない様に頑張る。 しっかりと気合いを入れ直し、先を歩く友人の後ろを追い掛けた。

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