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第844話

1組、また1組とゴールへ駆けていく。 次は、三条の番。 石灰で書かれたスタートラインに立つと、こめかみを汗が伝う。 気温の他に緊張だろうか。 よーい、で腰を上げ前を見据える。 パンッと硝煙のにおいを撒き散らしながらスタートが切られた。 全校生徒の前を走るのも注目を浴びるのももう嫌だ。 早く終わらせてしまいたい。 その思いがより早くゴールへと向かう力になる。 地面を蹴り上げより大きく1歩を踏み出す。 風の音が聞こえる。 その風が身体に纏わりついて身体が重い。 1歩また1歩と地面を蹴り、自分の脚に脚が絡み転けそうになりながらゴールに入る。 なんとか転ばずに済んだけど恥ずかしい。 そんな中、口をついた第一声は疲労だった。 「つ、疲れた…」 「きっつ。 はー、今年は完敗だな。」 殆ど変わらずしてゴールを踏んだその声にそちらを見ると眩しい笑顔のまま肩を小突かれ、三条は空気を和らげた。 「でも、他の競技はうちのクラスが勝つから。」 「うちだって勝つから。」 「いやいや、うちのクラスな。 ちなみに総合優勝もうちだから。」 嫌みのない笑顔に、三条も言い返す。 もし、同じクラスだったら、選択教科が同じようだったら、友達になれただろうか。 もしかしたら、それは今からでも遅くないのかも。 お疲れとお互いを讃え、応援席に戻ると悪友が向かえてくれた。

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