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第850話
「追い越しやがった…」
「おい、現役じゃねぇだろ。
長岡いくつだ?」
「20…後半?30前後だろ?」
長岡は膝に手を着いて息を吐くと、すぐに姿勢を正し駆けてきた係りにバトンを渡す。
三条の居る応援席からだと余裕そうに見えるその姿に周りはざわつく。
「いや、下な話になるけど長岡の彼女半端ねぇだろうな…」
「うわ、担任のそういうの考えたくねぇ」
いや、そうなんだけど、
でも…すごい
遠くてよく見えないのが悔しいが身長のお陰で見通しだけは良い。
頭の間から長岡の覗くと満面の笑みを浮かべた体育教諭に背中を叩かれながら何か話しているようだが、生憎背中を向けている。
どんな顔をしているのか見たい。
背伸びをするも赤茶けた髪と背中のみ。
すぐさまA組代表がゴールに入り長岡の隣に並ぶ。
その生徒に何か話し掛け2人で振り返った。
悔しかった
楽しかった
日に焼けた皮膚が痛い
応援のし過ぎで喉が渇いた
A組みんなで手を降ると教師の顔をした長岡の口角が上がった。
それを見れた三条も観笑を湛える。
太陽の下こんなに堂々と手を振れるのが嬉しい。
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