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第856話

「あ、そういえば夏みかんの話ありましたよね。 モンシロチョウが夏みかんになる話。 なんだっけ…」 「あぁ、あー…、白いぼうしか?」 「白いぼうし……そうだ、それです!」 スマホで検索をかけ、思い出した。 初夏にぴったりの爽やかな話。 まるで、文字からもにおいがするみたいだと記憶に残っていた。 「モンシロチョウは夏みかんじゃなくて女の子になるんですね。 帽子の中が夏みかん。」 「ここに来てまで勉強か。 ほら、剥いたぞ。 はるちゃん、あーん。」 すっぱい夏みかんを口に放り込まれると、じわっと唾液が出てくる。 でも、美味しい。 顔をきゅーっとさせながら食べていると長岡の顔が近付いてきた。 「すっぱいキスははじめてですか?」 「……キス自体、正宗さんがはじめてです…から…」 「嬉しい事言ってくれんだな。 ほら、もっかい。」 触れ合わせるだけの軽いキスだけどとても気持ち良くてとてもしあわせな気持ちになる。

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