857 / 1273

第857話

飯も食べて、風呂も入った。 髪を乾かしてもらって、乾かして、テレビを観て高校野球の結果に驚いて。 あんなに真っ青だった空も今はすっかり夜の帳に包まれている。 「おいで。」 タオルケットをかけると抱き締められた。 どんなに暑くても、正宗さんは俺を抱き枕にして寝る。 冷房が効いてるから暑くはないけど、正宗さんは暑くないのだろうか。 「あの、暑くないですか?」 「ん? 暑いか?」 「俺は暑くないです。 正宗さんです。」 顔を覗かれ、大丈夫かと問えばなんだそんか事かと笑われた。 正宗さんはよく笑う。 長岡先生しか知らなかった時は整った顔にあまり笑顔の印象はなかった。 笑うは笑うが作り物っぽいと言うか。 でも、目の前の笑顔は本物だ。 髪を梳く優しい手に三条の目がとろんとする。 優しい手は冷房で何時もより冷たくて気持ち良い。 「暑くねぇよ。 このまま寝てぇな。」 「俺も…」 「素直で良い子。」 髪に顔を埋める長岡は、ぽん、ぽん、と優しく背中を擦り三条を夢の中へと誘う。 もっと沢山話したい事があるのに。 もっと沢山くっついていたいのに。 「明日の朝は何食うかな。」 「正宗さんと一緒ならなんでも美味しいです。」 「ははっ、安上がりだな。」 「贅沢ですよ。」 ずっと上がりっぱなしの口角は下がらない。 どうしてこんなにしあわせなんだろうと胸に額をぐりぐり押し付けていると目蓋が重くて、もう少しで閉じてしまいそう。 「良い夢みるんだぞ。」 「ん、正宗さんも…」

ともだちにシェアしよう!