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第859話

「う…ん…、」 うーんと渋い声を出したかと思うと、とろんとした目が自分を捕らえた。 寝起きで回らない頭をぐるぐると動かしながら言葉を発する。 「まさむねさん」 「ん、おはよ。 喉がさがさだな。 喉渇いたか。」 「おはよ、ございます。 かわきました…」 寝起きは悪くない遥登だが今日は眠そうだ。 乱れた髪のままの遥登の頭をぽんと撫でると寝室を出る。 冷蔵庫から麦茶のペットボトルを持って戻ると、眠い目を擦り欠伸をしていた。 長岡に気が付いた三条はぱっと口を手で覆ったが大きな欠伸だったと笑うと、ふにゃふにゃと笑う。 ベッドを軋ませ、隣に腰掛けるとペットボトルを差し出した。 「ほら、飲みな。」 「ありがとうございます。 いただきます。」 受け取ったそれのキャップを開け煽る。 上下する細い喉。 ぷはっと口を離すと今度は自分の前にペットボトルが差し出された。 貰うな、と飲むと身体中に染み渡る。 「今日は1日ふとん中ってのも良いな。 テストも体育祭も終わったし自堕落でも良いだろ。」 くりくりといた目がキラキラと輝いた。 そして、ふわりと細められる。 とても綺麗だ。 「贅沢ですね。」 「たまには良いだろ。 遥登とだらだらすんの贅沢だな。」 「ずっと正宗さんの隣嬉しいです。」 忠誠心の高い犬の様にずっと隣にいてくれる三条はふにゃーと表情を緩めた。 表情豊かなその顔はずっと見ていても飽きない。 「俺も、遥登の隣嬉しいよ。」 その言葉に三条は大きく尻尾を振った。

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