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第874話

随分と日が長くなり、ふと涼しい風が入ってきたなと腕時計を見るといい時間になっていた。 はっと顔を上げると、目の前でじっと自分の手元を眺めていた三条が同じ様に顔を上げる。 週末多くの時間を共有しているせいか、遥登がいる空気になんの違和感も持てず長い時間放っておいてしまった。 「悪い…、ほったらかしてた…。 こんな遅くまで残してしまって。 今更なんだが、田上どうした?」 「田上は用事があるって先に帰りました。 吉田は予備校です。 俺は暇ですし。」 「あ、電車あるか? 待つようなら、暑いけど此処で待ってても良いぞ。 教室誰か居るか。」 「先生は此処に…」   頬から顎にかけて手の甲で汗を拭いながら口元を隠した三条の頬がみるみる赤くなっていく。 暑いからだけじゃないとすぐわかる反応。 この教え子はわかりやすい。 「もう少し此処にいますよ。」 「…ご迷惑でなければ、此処で待たせてください。」 「勿論どうぞ。」 はにかむ三条になにか本でも貸そうかと申し出ると、見てるのも楽しいですと可愛い事を言われ長岡はとうとう頬の筋肉を緩めてしまう。 プリントの裏に文字を書き込むと三条は破顔した。 『一緒にいれんの嬉しい』

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