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第876話
「推薦の話きてんだけど、どうだ。
成績も内申も申し分ねぇし学校側としては薦めたい。」
推薦…?
一瞬、その言葉の意味が解らなかった。
「俺…が、ですか」
「三条が、ですよ。
他にこの部屋に誰がいるんだよ。」
楽しい昼休み、放課後時間貰えるかと担任がやって来た。
これといった用事もないし、今日は母さんの帰りも早い。
二つ返事で頷くと放課後手が空いたら呼んでな、とすぐに準備室へ戻っていった。
なんだろうと思いつつ準備室に顔を出せば隣に行こうかと進路相談室を指さされる。
地形上どちらにしても風は期待出来ないのだから、2人きりになれる方が嬉しい。
そんな邪な考えは一気に吹き去った。
「ほら、これこの間のテスト結果。
何位ですか?」
「あ、」
「大変よく頑張りました。」
1の数字がこれ程嬉しかった事はあっただろうか。
顔を上げると教師の仮面のままだが口元がやわらかく弧を描いていた。
「ありがとうございます…!」
「なんのありがとうだよ。
三条が頑張った結果だろ。」
「先生の教え方が上手いからです。
沢山支えてもららってますし、その…」
「ん?」
「釣られ…ました」
正直に告白すれば、耐えきれず長岡が笑った。
綺麗に整えられた眉が下がっていて、手で口許を隠しても丸分かりだ。
「ははっ、それはそれは。」
目の前の担任が喜んでくれて嬉しい。
確かに、勉強は自分の為だ。
選択肢を増やす為、何かを選択する時に手助けにする為、色んな理由があるが簡単に言えば自分の為に他ならない。
だけど、俺は先生が喜んでくれている事が嬉しい。
長岡はまるで自分の事の様に喜んでくれる。
だから、本当に嬉しい。
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