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第879話

仕事のキリの着いた担任と一緒に玄関までやって来た。 わざわざ良いと言ったのだが背中を押され、進路室から歩いてきたがなんだか落ち着かない。 「三条、何が良い?」 「え?」 「金落ちるから選びな。」 突然かけられた声に下駄箱に向いていた視線を背後へ移すと、長岡が指差す自販機は既にお金が投入されていて光っている。 どれにしようか迷う時間はなさそうで、よく昼休みに飲む物を指差すとすぐにガコっと吐き出された。 長岡はもう1つ同じ物を購入すると片方を差し出した。 「ほったらかしてたお詫びです。」 「気にしてませんよ。 でも、ありがとうございます。」 手渡された缶ジュースは冷たくて気持ち良い。 頭を下げると髪が顔にかかって邪魔だ。 そろそろ切りに行こうと考えながら顔にかかった髪を払う。 「どういたしまして。 親御さんにも話しといてな。 面談で最終確認取れたら、面談練習したり放課後残って貰わないとだし。」 「はい。」 下駄箱から靴を取り出すと内履きと履き替える。 爪先の足の位置がおかしくて踵に指を入れ直し、靴を履き替え振り返った長岡は、段差のせいもあり何時もより高い位置にあった。 去年の身長差はこんなだったなと思うと懐かしい。 「先生?」 「いや、なんでもない。 気を付けて帰ってください。」 「はい。 あの、よろしくお願いします。」 三条もう1度頭を下げた。 自分のせいで仕事が増えるかもしれない。 帰りが遅くなるかもしれない。 だけどきっと長岡はなんて事ない顔で土日傍に居てくれる。 頭を上げると、長岡はコツっとポケットをつついた。 「任せてください。 じゃあ、また明日。」 「はい。 また、明日。」 三条は安堵しながら帰路を急いだ。

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