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第880話

「ただいまー。」 「兄ちゃん、おかえり! 今日の夕飯からあげだよ!」 「やった。 腹減ってるんだよな。」 お詫びだと貰った缶ジュースを冷蔵庫で冷やすのに台所に顔を出すと、汗を流しながら母親が大量のからあげを揚げていた。 クーラーが効いてる筈なのにその空間だけ異常に暑いのは揚げ物のせい。 「あっつ…」 「優登が食べたいって鶏肉買ってきたのよ。 流石に揚げ物させるのは中学生になってからかなって。」 「優登そういう所行動力あってすごいよな。 お弁当ご馳走さま。」 「はい、お粗末様です。 流し台に置いておいて。」 缶ジュースに名前を書き冷蔵庫にしまうと、鞄の中からファイルに挟まったプリント取り出した。 「…母さん、これ。」 「なに? 学校推薦?」 弟によく似た真ん丸の目が更にまるくなる。 そして、優しく細められた。 「遥登すごいね。 おめでとう。」 母親の第一声は祝福。 「頑張ってたもんね。 良かった。」 「兄ちゃん推薦貰ったの?」 「うん。」 「やった! おめでとう!」 弟の祝福も嬉しい。 すごく、嬉しい。 「優登、お父さんに連絡して。 ケーキ買ってきてもらってお祝いしよっか。」 「大袈裟だよ。 まだ受かった訳でもないし…」 リビングに向かう弟も嬉しそうにしている。 コンロの火を止めた母親はそんな事ないと首否した。 「遥登の頑張りを認めて貰えたの。 お母さんはそれが嬉しいし誇らしい。 だって、私の息子よ。 嬉しくない親はいない。」 18歳の180cmを越えた息子に、優しくまるで小さな子供に諭す様に母は言う。 リビングから優登が父さん早く帰ってくるって!と声をかけてきた。 照れ臭いけど、だけど、言う言葉は1つしか知らない。 「ありがとう。」

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