881 / 1273

第881話

やっと迎えた夏休みだと言うのに3学年はしこたま課題を出されたらしい。 かくいう自分達もしこたま出したが。 それでも三条は課題をこなして、補講の帰りに、と時間をつくり長岡の元へ訪れる。 定位置に座る三条の隣に長岡も座ると、職場では触れる事が出来ない恋人の髪を梳く。 さらさらと溢れていく髪は触れていて気持ち良い。 バス停から歩いてかいた汗はすっかりひいて乾いていた。 「遥登はどんどん先を進むな。」 「どういう意味ですか?」 「目標があってそれに真っ直ぐ向かってて、格好良いよ。」 長岡からの賞賛に三条はきょとんとした顔からやわらかく変えていく。 「もし俺が格好良くみえるなら、目標になる方が格好良いからですよ。 俺のお手本ですから。」 三条はなんて事ない様に言ってみせた。 三条のこういうところが好きだ。 さらりと人の長所を見付けさらりと褒める。 細い身体を自分の脚の間に引っ張ると、ぎゅぅっと抱き締めた。 細くてあたたかくて、清潔な遥登のにおいがする。 「マジか。」 「マジです。」 三条も背中に手を回すところころと笑う。 生徒の成長は嬉しい。 勿論恋人としても。 だけど、ほんの少し寂しく思ってしまう。 「格好悪い姿見せらんねぇな。」 「見せてください。 色んな姿見たいです。」 肩に埋めていた顔を上げ今度は首に顔を埋めてくる可愛い恋人。 「生意気になったな。」 「成長したんです。」 すりっと首に頬擦りする三条の髪に、長岡も頬を寄せた。

ともだちにシェアしよう!