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第884話
明かりの点いた部屋の玄関ドアを開けるとスニーカーが綺麗に並んでいる。
それを見るだけでこんなにも嬉しい。
ドアの開閉音ににこやかな顔が顔を出した。
「正宗さん、おかえりなさい。
お邪魔してます。」
「ただいま。」
この笑顔が出迎えてくれる帰宅はしあわせだ。
今にも自分の回りをぐるぐると回りそうなよく懐いた犬の様な顔に、肩の力が抜ける。
緊張もなにもかもが飛んで身体が軽くなるのが解る。
わざわざ廊下に出てきてくれた遥登とリビングに入ればひんやりとした空気が気持ち良い。
ジャケットを脱ぎディンプルを解くと、首もとのボタンを外してやっと楽になった。
三条もワイシャツのみでネクタイは外している。
「帰らなくて良いのか。
不良少年。」
「……母さんと帰りにくいですし、」
からかえば目線を反らされてしまう。
そりゃそうだ。
噛み痕だのキスマークだのに塗れた身体で、それを着けた本人と母親と3人で話してたんだ。
羞恥心の強い遥登ならその緊張が如何程か想像に容易い。
「んじゃ、やさしーいお兄さんが保護してやろうかな。」
「…本当、ですか?」
「ん。
おいで。」
今度は素直に腕の中に収まってくれる可愛い恋人。
首もとから赤いマーキングがちらりと覗く。
これだから、たまらないんだ。
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