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第887話
長い脚をソファの外に投げ出しスマホを弄る長岡はだらけた姿すら様になっている。
暫くじっと見ていたが、親指で唇を撫でながら真剣な顔をしているので、三条も静かに課題を解きはじめた。
どれ位時間が経ったか長岡はソファから起き上がると、床に座りスマホを見せてくる。
「遥登、ご褒美これどうだ?」
差し出されたスマホ画面には夏祭りの文字。
そういえばご褒美に釣られテストを頑張ったんだった。
でも、花火大会なんて流石に生徒に会ってしまったりやばいんじゃないかと恋人を見上げると、穏やかな視線を向けられる。
きっと何を考えているかなんてお見通しなんだろう。
「大丈夫。
早めに帰ってくるから、早めに飯食って一緒に見ような。」
心配気に見詰める三条を安心させる様にぽんと頭に手をのせるとわしゃわしゃと掻き回した。
お誘い自体は嬉しいし、その日は平日。
平日一緒に食事が出来る事も嬉しい。
三条は少し考えてから頷いた。
「…はい。」
「なんだよ。
元気ねぇな。」
「だって、バレて正宗さんが教師…なにしてるんですか」
両手で頬を挟まれ、犬を撫でる様に捏ねられる。
「はるちゃんのほっぺむにむに」
「ぷはっ、ははっ、正宗さんがほっぺむにむって似合わないです。」
思わず吹き出してしまうと長岡は優しく頬を撫で回した。
脂肪のない頬は長岡の手でむにむにと揉まれ、細められたあの目が自分を見る。
頬を挟んだまま上唇を食まれ、顔が離れると約束と綺麗に微笑む長岡に三条はもう一度頷いた。
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