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第888話
「これなら大丈夫ですね。」
「だろ。
しかも涼しいし混んでねぇし2人きり。
最高。」
冷房を効かせた車中で、途中で買ったお茶を飲みながら眺める先に大輪の花火が咲いている。
夜店や境内から離れた場所に駐車した車の中、長岡も同じ物を煽りながら正面を見る。
遠くに車を停めた理由はすぐにわかった。
リクライニングに寄っ掛かって見ても首が疲れない様に。
長身ならではの気遣いが嬉しい。
赤や黄色、緑に青。
色とりどりの花は一瞬力強く咲いては儚く消える。
「綺麗ですね。」
「あぁ。
花火なんて何時ぶりに見たかな。」
「あ!
今の星形でしたよ!
見ましたかっ。」
「子供かよ。」
手に長岡の冷たい手が重なったと思ったら、ゆっくりと恋人繋ぎへと変わっていく。
ゆっくり、ゆっくり。
焦らされる様に繋がった。
隣を見ると花火に照らされる横顔も格好良くて、綺麗で、胸がきゅぅっと苦しくなる。
触れた所から好きの気持ちが伝わったらどうしよう。
この暗闇で、赤くなる頬を隠せるのがせめてもの救いだ。
きゅ、と握り返すと負けじと握り返される。
空気を揺らす破裂音にも負けない位、心臓がドキドキと騒ぐ。
好き
好き
愛してます
「…帰せる自信なくなってきた」
「……俺も、です」
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