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第889話

玄関に入るとまた絡まる細い指。 甘い雰囲気に、色っぽい恋人。 蒸し蒸しする夏の空気。 「ん、んぅ…ぁッ、……ぷはっ」 「下手くそ。」 耳元で囁かれる言葉にすら感じる三条はぴくりと肩を跳ねさせた。 あの後自宅に外泊すると連絡した年下の恋人に甘える駄目な大人は、袖から手を進入させると薄い腹を撫で、肋の浮いた胸を撫で、更に被虐の火を焚き付けていく。 「まってくださっ、シャワー…きたない、から…正宗さ、腹…あの、しないと…」 「…我慢出来ねぇ」 焦りの隠せない声を悟られない様、顎のラインにねっとりと舌を這せた。 駐車場から階段を昇り、かいた汗の味がする。 「でも…」 三条の持っていたペットボトルが手から滑り落ち、足元に転がる。 そんなものに目もくれず長岡は恋人を貪る。 また噛み付くようなキスをすると頬を掴む手に三条の手が触れた。 「俺も…したい、から」 キスの合間に聴こえた小さな声。 理性なんて殴り捨てて汚物に塗れようと構わないと思っていたが、その言葉に口を離した。 ずるずると背中を壁に付けながら床に座り込んでしまう三条の腕を掴んで引き上げると、浴室へと引きずり込む。 覚束ない足取りで必死に付いてくる恋人を浴室に押し込むと冷たい水を頭から被った。 駐車場から部屋までの短い道程でも火照った身体。 少しでも頭が冷える様に、遥登までびしょびしょにして。 こんなに愛しい気持ちに溢れているのに、酷くしてしまう。 顔に貼り付いた髪を払うとまた息も出来ないキスを繰り返した。

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