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第897話
仕事中冷蔵庫を借りると連絡がきた。
どうぞ、と簡単に返信をしたのは昼休み。
帰宅して三条の作ってくれた夕飯を一緒に食べ、風呂を洗いに行こうとしたら済んであると言われ、洗い物をすると言えば休んでいろと言われた。
至れり尽くせりは嬉しいが、三条にこんな事をさせる為に一緒にいるのではない。
「片付けば俺がする。
遥登こそ休め。
1日勉強しっぱなしだろ。」
「俺は休みですけど、正宗さんは仕事だったじゃないですか。
俺がします。」
「休みって、勉強してただろ。
勉強は遥登の立派な仕事です。」
スポンジを取ろうと伸ばした手を掴み胸に抱き寄せる。
ちゅぅ、と唇で触れると大人しくなった。
自分の言い分を通すのにこういうやり方はどうなのかと教育者として思うが、そうでもしなければ三条は自分に気を遣う。
恋人になって2回目の夏だがまだ遠慮の多い三条にもっと甘えて欲しいと思うのは我が儘だろうか。
「洗い物は俺がしとくから先シャワー浴びておいで。
準備、1人で出来るよな。」
「っ!?」
「折角早く帰って来れたんだしセックスしようか。」
腰を抱く手に力を入れ股間を触れ合わせると、みるみる内に三条の顔は真っ赤に染まる。
顔から首、半袖から覗く腕まで赤くなっていた。
「俺、ご飯食べたので…あの…」
「んな激しくしねぇよ。
激しいのが良かったか。
悪りぃな。」
覗き込めばすぐにあの目が見える。
「…大人って狡いです、」
「遥登と俺は対等だよ。
だから、甘えさせて?」
耳元で囁くと近くなった頭に自分のそれをこつんとぶつける。
真っ赤な顔でゆっくりと頷いた三条の背中を押すと浴室へと向かった。
大人が狡いんじゃなくて俺が狡いんだよ
狡い奴にあんな素直に従って
…早く洗い物済ませて俺も風呂行こう
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