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第898話

朝からそわそわしていた三条は昼飯の洗い物が終わると恐る恐る声をかけてきた。 ソファでだらだらしていた長岡はその声に座り直すと、三条と向き合う。 「正宗さん、来週泊まっても構いませんか…?」 「ん、勿論。」 三条は嬉しくて尻尾を振る犬の様な顔を見せた。 そんなの遠慮しなくて良いのにと思うが三条らしい。 「俺の誕生日?」 「はいっ。 今年もお祝い出来たらなって。 丁度日曜ですし沢山お祝いしたいです。」 ふわふわ笑う三条はそれは嬉しそうな顔でそう言った。 一緒に祝える事が本当に嬉しいと解る顔に愛おしさが込み上げる。 「去年すげぇ嬉しかった。 また祝ってくれんの?」 その質問に三条は再度しっかりと頷いた。 去年、はじめて一緒に過ごした誕生日。 一緒に洗濯物を干して、セックスをして、オムライスを食べて、何時もと変わらず過ごした。 けれど、すごく楽しい日だった。 特別な日だった。 「今年も期待しちゃお。」 「ご期待に添えるかは分かりませんが、頑張ります。」 悪戯気に笑ってみせればずっとにこにこ笑っていた三条の笑顔がよりキラキラ眩しいものへと変わる。 前髪を乱す様に頭を撫でればへへっと笑う。 豊かな表情は見ていて飽きない。 次はどんな表情になるのか、どんな風に変わるのか、それが見たい。 「ケーキ食べて、オムライスも食べましょう。 それからダラダラしてゴロゴロしましょう。」 「遥登さえいてくれれば良いよ。」 「毎週いるじゃないですか。 あ、ダラダラゴロゴロも変わりませんね。」 「それが良いんだよ。」 それが良い。 遥登と何時もと変わらず過ごせるのがなにより嬉しい。

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