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第900話
玄関に入ると長岡は三条の頬を親指と揃えた指で挟んだ。
顔を上向きにされた三条は訳も分からずされるがままに長岡を見詰める。
……?
途端、長岡の綺麗な顔がゆっくり表情を変えた。
「もう膨れてねぇな。」
「あ…」
「キス出来ねぇか。
残念だなぁ。」
笑いを含んだ声にはっとする。
そうだ
すっかり忘れていた
部屋まで膨れているつもりだったんだ
長岡の手に持っているビニール袋がガサッと音をたてて床に置かれると、三条は壁へと追い詰められた。
頬を掴まれたまま、とんっと背中に触れる硬い壁掛け逃げられない様に腰も手を回されてしまう。
「んー?」
これも、恋人の癖だ。
間延びした声も楽しそうな顔も大好きで、たまらない。
好き
好き
肩に手を置くと踵を浮かす。
愛しい人の好きな事。
「おかえりなさい、正宗さん」
チュ
「ただいま。
遥登もおかえり。」
自分からキスすると、恋人からも降ってきた。
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