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第901話

水気を切った中華麺を皿に盛り付けると、フライパンからピリ辛の肉味噌をこれでもかとのせられる。 それだけでも十分美味しそうなのに、正宗さんは温泉たまごと胡瓜ものせてくれた。 「美味しそうですね! ジャージャー麺大好きですっ。」 「ははっ、ほんと良い反応してくれるよな。 作りがいがある。」 美味しそう、と言うより実際本当に美味しい。 ピリ辛がたまごのまろやかさとが合わさるとたまらない。 しかも、温泉たまご。 そこに胡瓜のシャキシャキ感がアクセントになってそれはそれは美味しい。 そして、大好きな人と食べられればそれはうんと美味しさを増す。 隣で手洗いを済ます長岡は愛おしいしそうにその横顔を眺めていた。 「伸びる前に食うか。」 「はいっ」 テーブルを拭く時に箸やカップは机に置いた。 あとはジャージャー麺のお皿と総菜の生春巻きを持っていくだけ。 「あ、麦茶のポット持ってきてくれるか。」 先に席に着いた長岡は三条からポットを受け取ると自分の分と三条の分のマグに冷たい麦茶を注いだ。 溶けて動く氷がからんと音をたてた。 いただきますと手を合わせて長岡が口にしたのを確認してから、自分もそれに箸を付ける。 ぷるぷるの温泉たまごを割りたい気もするが、まずは割らずに肉味噌を麺に沢山絡めて啜った。 「んまっ」 2口目を持ち上げ口を開けたまま長岡は三条に視線をやると、目で良かったと伝えてくる。 「正宗さんのご飯すごい美味しいです!」 「それしか言わねぇな。」 「そうですか?」 「他にも言葉教えてやろうか。 美味い時は、正宗さん愛してますって言うんだよ。」 悪戯気な言い方にからかわれていると解ってはいるが身体が熱くなっていく。 弧を描く口元に、穏やかな目、時々見せてくれる無邪気な姿も、学校では絶対に見えない。 自分だけが知ってる顔。 「…その……、正宗さん、あい、してます」 「俺も、遥登の事愛してます。」 やっぱりその言葉は美味しいの意味ではないじゃないか。 でも、“一緒に”食べられて嬉しいだとか、“一緒に”食べられて美味しいだとかそう言う大きな意味では合っているのかも知れない。 恋人の満開の笑顔に、三条は急いで2口目を口にする。 箸がぶつかったたまごはとろとろと黄身を垂らし、麺に絡まっていく。 ゆっくり食べろ、と声を掛けられ頷いたけど、恥ずかしくて食べる事で紛らわせたい。 また一口麺を啜ると長岡は仕方がねぇなといった様にまた笑った。

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