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第905話

眠い目を擦りながら欠伸をひとつすると、目の前の胸に顔を埋めた。 日付は日曜日に変わっている。 8月26日。 長岡の誕生日。 昨夜、日付けを越えても身体を重ねていて最中なんとかおめでとうは言えたが、まともに言えていたかは定かではない。 気持ちを伝えようと開いた口からはいやらしい声ばかりが漏れていて、思い出すだけで恥ずかしい。 自分を抱き締める腕に力が入ったと思えば、恋人の癖がはじった。 優しく髪を梳く冷たい手。 ちゅっ、と頭の天辺に唇と押し付けてくる。 俺が寝ててもしてるんだ …なんか嬉しい 「正宗さん、おはようございます。 誕生日おめでとうございます。」 「んだよ、起きてたのか。 先に起きたら起こせって言ったろ。」 「今起きたばっかりですよ。」 長岡は器用に三条の脚を自分の脚で挟み絡めてきた。 まっすぐに自分を見る長岡は髭が伸びていて寝起きで髪の毛も乱れていて、学校での真面目な長岡先生とはまったく違う。 本当の長岡はただの本の虫で恋人に甘い世界で1番格好良い人。 「目が起きてる。 寝起きならもっと眠そうでとろとろしてんだろ。 あーあ、遥登の声で起こされたかったなぁ。」 まるで子供みたいだ。 それも弟よりも小さな。 自分を抱き枕にしてゴロゴロしはじめた恋人に朝の挨拶をする。 「正宗さん、起きてください。 おはようございます。」 「おはよ。」 目を見て挨拶をすると、綺麗な顔が近付いてきた。 綺麗で、愛しくて、大切な人とのキスは身体中がしあわせに包まれる。

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