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第928話
通話の了承を得ると一呼吸置いて画面をタップした。
短いコール音はすぐに切れ、本の沢山詰まれた部屋へと繋がる。
「こんばんは。」
『こんばんは。』
恋しい人の声に胸がきゅぅっと締め付けられた。
それだけ焦がれていたんだなと少し恥ずかしくなる。
「こんな夜中にすみません。」
『いや、起きてたから大丈夫。
それに俺から連絡したんだろ。
どうかしたか?』
「風邪は、大丈夫ですか」
通話口の向こうで長岡は笑った。
『律儀だな。
うん。
大丈夫ですよ。
もうくしゃみも止まりました。』
「本当ですか…?」
『疑うんだな。
本当に大丈夫。
なんなら火曜キスするか。』
「…し、信じますっ」
『ははっ、なんだ。
残念。』
残念なんだ
残念って思ってくれるんだ
…どうしよう
すっげぇ嬉しい
緩む頬の筋肉をどうする事も出来ず、ついにやけてしまう。
『遥登、来週は泊んだろ。
なに食いたい?』
「え、うーん…、焼きそば…?」
『焼きそば?
何時もと変わんねぇだろ。
テスト明けなんだから好きなもの言いな。』
やわらかな声が心地良い。
「正宗さんと一緒に食べられたらなんでも良いです。」
『…そういうところだぞ。』
「じゃあ、オムライスです。」
『そんな煽って、溜まってんのかよ。
えっち。』
処理位はしてるが溜まったモノを吐き出すだけの行為でしかない。
溜まってるのかと聴かれれば、答えはイエス。
だからと言ってお強請り出来る三条でもないし、長岡も解っていてからかっているだけ。
『来週の泊まり楽しみだな。』
「…はい」
『素直で良い子。
一緒に飯食ってだらだらしようか。』
「だらだら、します」
『ん。
テスト明けのご褒美にいっぱい甘やかすから、甘えな。』
「テストも頑張ります。」
『それは先生も嬉しいですけど、本当に休憩しながらやれよ。
俺も来週楽しみにしてんだから。』
来週の約束を取り付けた三条は嬉しさに尻尾を振りなが通話を楽しんだ。
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