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第929話

「さんじょー、よしだー、期間限定でラーメン特大盛り通常料金で食えるって。 行く?」 携帯から顔を上げずに田上は間延びした声で聞いてきた。 三条は弁当を頬袋に詰めながら頷く。 もぐもぐとそれを咀嚼してから口を開いた。 「行く。」 「金曜放課後で大丈夫?」 「うん。 てか、何処?」 机に置かれたスマホ画面を三条と吉田は覗き混む。 そこにはでかでかと特大盛りの文字が書かれていた。 田上がアクセスをタップすると都市部の住所。 「N市。 テスト終わったら遊んで夜飯にどうよ。 ほら、メニュー充実してんの。」 「美味そう。 楽しみ。 あ、吉田激辛もある。」 「お、辛そうだな。 俺、山椒弱いんだよな。 いけっかな。」 ワイワイと過ごす休み時間は楽しい。 たが、それが少しずつ変化しているのを三条は肌で、視界で感じていた。 肌を刺激するヒリヒリする空気。 机の上に広げられる参考書。 テスト前日と言う事も相まって何時もより言葉数も少ない。 受験生なのだと強く、強く、思い知らされる。 「でも美味そう。」 「美味そうだよな。」 自分にだって推薦の話はきているが、なんとなくその変化が終わりを主張し始め居心地が悪い。 砂時計みたいに残り時間が目に見えるのが寂しくて、目の前の友人達と過ごせる時間は目一杯楽しもうと決めた。

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