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第934話
1ヶ月ぶりの外泊。
それもテスト勉強で2週間ぶりの逢瀬も、三条は何時もと変わらず長岡の部屋で同じ時間を過ごしていた。
同じ空間に長岡がいるだけでしあわせだ。
換気と開けられた窓から気持ちの良い風が通る。
さらさらと三条の髪を擽った。
風がきもちい
すっかり秋だなぁ
ふわりと風上から長岡のにおいを巻き上げる。
正宗さんの部屋に来ているのににおいがする、なんて少しおかしいか
あれ…?
「ん?
寒いか?
おい、どうした。」
「正宗さん、においがしない。」
服に鼻を近付ける。
あの微かに混じっていた、ナッツの様な甘く、それでいてどこか苦い様なにおいはしない。
「におい?
くさいか?」
「煙草です。」
「あぁ、禁煙。」
口を触れ合わせるだけの軽いキスに三条は目を見開いた。
瞳を覗かれ、動きを止める。
そういえば、何時からかベランダで喫煙する背中を見なくなった。
冬場の空気の冷たさのせいかと思っていたが違ったようだ。
確かにあたたかくなっても、暑くなってもその姿は見ていない。
もう1度綺麗な顔が近付いてくる。
「ん…っ」
「これ、苦いだろ。
あとにおい移ると、な。」
ちゅぅっと口が離れていくと、未成年の三条から煙草の残り香がするのはよろしくないと長岡は苦く笑った。
「高ぇしやめようかと思ってたから丁度良いよ。
ま、元々苛ついた時しか吸わなかったし、学校でも吸わなかったからなそんな苦痛じゃねぇ。」
「そう、なんですか。」
服を握ったままの三条に機嫌の良くなる長岡。
目線を合わせ頬を掴まれもう1度綺麗な顔が近付いてきた。
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