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第946話

腹が減ったが折角恋人が甘えてくれてるのだからもう少しこのままでいたい。 短い言葉を交わしながらお互いの体温を存分に感じ合う。 ぐー、きゅるるる その音に空腹だったのは自分だけではなかったのだと小さく笑うと、目の前の恋人もはにかんだ。 「ははっ、腹減ったな。 飯にするか。」 「はい。」 「何食いたい。 遥登泊まりにくるから材料買ってあんだよ。」 名残惜しいがベットから抜け出る。 だけど今日は外泊日。 また飯を食ったら存分に恋人を甘やかそう。 ふにゃっと頬を緩ませる三条に適当な服を手渡すと、長岡も着衣を身に付ける。 背後を見ると、マーキングが着衣に隠され無垢な姿になってしまった。 セックスなんて知りませんとばかりの無垢さは何度セックスで汚そうが汚れる事を知らず、だがそんな無垢な恋人は自分のものだと優越感が自分を包む。 「痕見えてる。」 「うそ…っ」 「嘘。」 からかうと子供みたいと言われたが、この子の前では大人も子供も関係ない。 1人の人間として対等で在りたい。 真っ直ぐな髪を掻き乱し頭を撫でる。 さらさらと手から零れる髪が気持ち良い。 「着替えたら出てこいよ。 戸は開けっぱで良いからな。」 「はい。」 一足早く着替え終わりリビングに出るとベルトを締めた三条が足早に追ってきた。 その足音に長岡の口角が上がる。

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