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第952話
バレーとバスケの試合を見学する為に第1、第2体育館を行き来する。
あっちに、こっちに、どちらの試合も見たいから移動がもどかしい。
「あ、先生来た。
勝ってますよ。」
「来ましたよ。
お、A組勝ってるんだな。」
採点ボードに長岡の表情が少し変わる。
受け持ちクラスのリード、それも大差を付けては嬉しい。
「まぁ、相手が1年ですから向こうはやりにくいでしょうしね。」
きゅきゅっとスニーカーを鳴らし、ボールに食らい付く。
勿論中には運動が苦手な生徒もいるが身体を動かしストレスを発散するにはとても良い機会だ。
大きな声を出したり目一杯動き回ったり鈍った身体に鞭を打つのがめんどくさい事も勿論知ってはいるが、だが今思えば身体を動かした後は頭がすっきりしていた。
「A組、がんばーっ」
「優勝したら長岡が焼き肉だって!」
「嘘吐かないでください。
奢りませんよ。」
この2年半で随分と懐かれたなと、嬉しい様なむず痒い様な気持ちになる。
隣でにやにやと笑う生徒も入学当時はとてもこんな顔をする様には思わなかった。
それだけ長い時間を過ごしてきた、良い関係を積み立てられている。
そう思うと教師と生徒とは不思議な関係だとつくづく思う。
「ナイッシューッ」
ゴールを決めた生徒は此方に手を振りまた試合に戻った。
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