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第958話

アタックが中々決まらず先程からラリーが続く。 両チームタイミングを決めかね、応援に見守っているクラスメイト達も固唾を飲む。 この試合で勝ったチームが優勝。 一点でも落としたくない。 いや、落とせない 23ー20 A組が優勢だが、まだ逆転も有り得る。 気を抜けない。 相手チームから三条の真上にボールが飛んできた。 ラッキーボールだ。 トンッと三条がアンダーパスを上げると吉田が動いた。 吉田は一瞬屈み、相手の意識がそちらに向く。 「やべっ」 だが、ボールを打ち込んだのは吉田ではなかった。 時間差攻撃で元バレー部の小出が大きく飛んだ。 大きくはない小出だがバネがあり、思いきり振り上げた反動でボールを叩く。 バシンッ、と床を震動させるボール。 ピッとホイッスルが鳴った。 「しゃっ、マッチポイント!」 「焼き肉!焼き肉!」 A組の声に応援に来ている長岡は苦笑いを浮かべたが、反論する事もせずただ見守っていた。 折角の良い流れを断ち切りたくないと。 教師の顔をして静かに恋人を見守っていた。

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