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第959話

大きな怪我も事故なく閉会式をむかえたと校長の長い長い話も終わりやっと教室に戻って来た。 体育館は熱気であたたまり特別寒いと言う事はなかったが、やっぱり寒くても教室の方が居心地が良い。 担任でさえそう思う。 「球技大会、お疲れ様でした。 焼き肉は奢りませんが、バレー優勝、バスケも準優勝出来て先生も嬉しいです。 大健闘ですね。 おめでとうございます。」 長岡は満足そうな顔でショートを進めていく。 バレーは優勝、バスケも準優勝と生徒達もそわそわと浮き足立っていた。 囃し立てる声も大きい。 「…今日だけ特別です。」 教卓の中から白い袋を取り出すと中から茶色い物が表れた。 「焼き肉味のふりかけです。」 「ふりかけかよ。」 「やったー!」 「長岡ありがとう!」 「焼き肉ーっ」 「もう少し静かに。 他のクラスの迷惑になるだろ。」 配られるふりかけにクラス中が更に騒がしくなった。 いくら端っこのクラスでも、隣にはB組もいる。 階段から下に響けば職員室にも聞こえてしまう。 頼むからもう少しお利口にと長岡は眉を下げたが、聞こえているのかいないのかクラス内には楽しそうな声が満ちている。 「返してもらうぞ。」 「やだぁ。 明日のお弁当で食べるね。」 「先生ありがとう。」 「長岡、ありがとう。」 懐れ過ぎたなと思うが、三条と付き合いだしてからそれがむず痒くなった。 素直に嬉しいと思う。 心迄やわらかくしてくれた三条は偉大だ。 「全員受け取りましたか。 後は先生が食べますよ。」 「大丈夫。」 「貰ったー。」 「彼女と食べるの?」 「プライベートは秘密ですよ。 えーっと、文化祭の実行委員、今日の放課後3Eに来てくれって連絡がきてます。 あと図書委員も図書室に来て欲しいそうです。 忘れずに行ってください。」 生徒の茶化しを受け流しつつ、業務連絡を伝える。 あと何回この生徒達のこんな楽しそうな顔を見られるだろうか。 長岡はその顔を頭に焼き付けた。

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