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第962話

球技大会も終わり、月末には文化祭がある。 楽しい空気も漂ってはいるが、教室の空気がなんだか痛い。 “受験” それが原因なのは解っている。 AOが落ちただの合格しただのも耳に入り始めた。 逃げている訳ではない。 ただ、好きじゃない空気に目の前の友人の名前を呼んだ。 「三条」 「うん?」 目の前の友人、三条は何時もと変わらない。 ふにゃふにゃ笑いながら頬袋を膨らませて弁当を食べている。 吉田もだ。 知佳ちゃんが可愛いとそればかり。 勿論2人とも進路をしっかり考えそれに向かっているが、纏うものは出会った時と変わらないままでいた。 この2人は安心する。 「からあげ、ちょーだい」 「デニッシュ2口と交換。」 「ぐぅぅ…」 「2口位やれよ。 ほんっとコントみてぇ。」 ん、とデニッシュを差し出すと弁当箱が差し出された。 からあげを摘まむと、三条はパンにかじり付く。 口の端に粉糖を付けしあわせそうに頬を緩める三条は本当に美味そうにものを食う。 俺もからあげを口に放った。 生姜の効いたジューシーなからあげは冷めても美味い。 「んっまぁ」 「からあげもうめぇ。 デニッシュ2口以上にうめぇ。」 「じゃあ、もう1口もらって良い?」 にこにことしながらとんでもない発言をしてくる友人から急いでパンを返してもらった。 最近の三条は手強い。 なんて言ったら良いか分からないけど、紙一枚上手だ。 「ありがとう。 美味かった。」 「田上、俺も一口!」 「じゃあ、そのからあげパンのからあげ1つと交換な。」 「いやいやいや、比率がおかしい。 ちょ、俺の焼きそばパン取んなよ! 成長期なんだよ!」 俺は、このくだらない事で騒げる2人が大好きだ。

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